喘息や食物アレルギーの持病を持つお子さんの場合、その程度にもよりますが、国内旅行はまだしも、海外旅行というのは少しハードルが高いと感じられる場合も多いのではないでしょうか。

我が家の息子二人もアレルギー疾患がありました。
長男は喘息で小学校入学前は季節の変わり目には入院していました。また次男は食物アレルギーがあり、アナフィラキシーショックをおこしたこともあります。小学生になって喘息も発症しました。
特に長男は重度だったため、最初は旅行、特に海外旅行に行くことに不安がありました。

厚生労働省の調査等によると、喘息や食物アレルギーなどのアレルギーの持病を持つお子さんは増加傾向にあるようです。
アレルギーの持病を持つお子さんで旅行を考えていらっしゃる場合、我が家と同じように不安を感じられている方もいらっしゃるかもしれないと思い、海外旅行の際に我が家で準備したことや気をつけたこと参考になったサイトなどをまとめてみたいと思います。

喘息の子供との旅行の準備・気をつけたいこと

旅行先の選択で気をつけたいこと

衛生状態・医療水準

子供に様々な世界を見せたいと考える親御さんは多いと思いますし、私もいろいろなところにつれていきたいと思っていました。
ただ、持病を持つ子供にとっては、もしもの場合にも安心して旅行できる地域は限られています。
衛生状態がよく、一定以上の医療が受けられることを事前に確認する必要があります。
アメリカ合衆国(ハワイ・グアム含む)、香港、シンガポール、台湾、韓国、カナダ、西ヨーロッパ、オーストラリアなどは安心して旅行できるかと思います。人気のあるアジアリゾート地域については、現地の医療水準が低い場合もあるので、滞在先の近くの医療施設を確認する必要があります。

空気汚染

それぞれのお子さんによって、喘息の発作を引き起こす物質は異なります。
また、症状や体質によっても状況は異なってくると思います。
我が家の長男の場合は、ダニやホコリに反応するタイプでしたので、旅行先として、空気汚染が問題になっていないことが大前提としてありました。
外務省の海外安全渡航情報(外務省:海外安全渡航情報)の地域別のぺージに、空気汚染で注意すべき場合に、注意事項として記載がありました。
シンガポールへ行くことを検討した際に、インドネシアのプランテーションの野焼きの影響により、シンガポールにヘイズ(煙害)が発生していることを知り、行き先を変更したこともあります。

渡航先の感染症発生情報

旅行先での感染症情報もチェックが必要です。特に、喘息児の場合は、呼吸器系の感染症は危険ですので、人混みなどにも注意したいところです。
次のサイトに海外感染症の発生情報があり参考になります。
厚生労働省検疫所:海外感染症発生情報

飛行距離

飛行時間も考慮が必要です。
吸入薬などを機内に持参されている場合が多いかと思いますが、気圧が変化することもあり、はじめての場合は特に飛行時間は短い方が安心かと思います。

かかりつけ医への相談と英文診断書

それぞれのお子さんの状況によりますが、旅行先が決まったらかかりつけ医に相談される方もいらっしゃるかと思います。

我が家の場合は、相談しました。その際に、旅行先、旅行期間などをお伝えし、旅行に行っていいのか、気をつけることはないのか等をアドバイスいただきました。

また、場合によっては、英文の診断書を書いていただくと安心です。我が家も書いてもらいました。
処方していただいている薬についても説明を記入していただきました。

長期の滞在になる場合は、日本旅行医学会が販売している「自己記入式安全カルテ」というものも便利に利用できるかと思います。
診断書を書いていただくと3,000円程度かかります。
ご自身で、英語なり現地の言葉でまとめられれば、問題ないかと思いますが、英語で説明することに不安がある場合は、こちらも便利かと思います。

※日本旅行医学会による「小児の旅行医学」という記事も参考になります⇒日本旅行医学会:小児の旅行医学

予防接種

日本の予防接種は先進国の中では種類が少ないほうだと言われています。

海外駐在などで、現地の小学校に入学されるお子さんが、追加予防接種が必要になることが多いですよね。先進国への短期間の旅行の場合はスケジュール通りに摂取を済ませていれば、あまり気にされなくてもいいかと思いますが、アジア地域などへ行かれる場合は、現地ではやっている感染症などについて注意が必要です。

我が家は日本脳炎の予防接種について、一時的に中断していた時期にもあたっていたのですが、沖縄への旅行の際に、接種して行きました。

接種が必要なワクチンなどは厚生労働省の次のサイトが参考になります⇒厚生労働省検疫所:海外渡航のための予防接種(ワクチン)

処方薬・吸入器等の持参

普段使用している薬や、発作の際の薬などを忘れずに持参する必要があります。

ご参考までに我が家で持参したものは以下の通りです。

現在は、アドエアディスカスという自分で吸い込むタイプの吸入薬を持参していますが、小さい頃は自分で吸い込んで吸入することが難しいため、電動式の吸入器を持参していました。

喘息の子の親を長くしていたため、子供の発作時の音が聞き分けられるようになっており、聴診器も持参していました(医療従事者ではないため、本来は適切ではないと思います)。

また、普段からパルスオキシメーターを利用していたため、こちらも持参しました。

ハンドブックは息子の治療について、現在どの段階の治療が行われているのか、自分の参考のためにいつも持っていました。
内容はサイトでも確認することができます。
日本小児アレルギー学会
小児気管支喘息治療・管理ガイドライン2017(web版)

パルスオキシメーターは指にはさむだけで酸素飽和度(SpO2)と脈拍を簡単に測定できるものです。
喘息のお子さんですと、病院で計測されたことがあるかと思います。医師ではないのため、この結果のみで大丈夫かどうかを判断することはできませんが、我が家は毎週のように夜間救急を訪れているような状態でしたので、大丈夫なのかどうかを確認するという点で重宝していました。

※ネブライザー等の機内への持ち込みについては、各航空会社にて決まりがありますので、念の為ご確認ください。

ANA:ANA:医薬品の持ち込みが必要なお客様

機内へ喘息のお客様の噴霧式吸入薬剤(メプチンエアーなど)をお持ち込み・ご使用いただけます。電動吸入器をお持ち込みのお客様は「医療機器を持ち込みされるお客様」をご確認の上、事前にお知らせください。

JAL:医療機器を持ち込みされるお客さま

ぜんそくのための電動式吸入器(ネブライザー)や、酸素濃縮器(POC)、吸引器などを
機内で使用される場合は主治医が記入した航空会社所定の診断書が必要となります。

我が家はネブライザーを機内に持ち込むことについて今まで特に問題になったことはありませんが、一応カウンターにて確認しています。

マスクやウェットティッシュなども日本から持参していると便利です。
マスクは飛行機内や人混みの中、ホテルの部屋などが普段と違って埃っぽいなどという時にもさっとガードができます。
また、消毒できるウェットティッシュなども気になる部分をさっと拭くことができます。

日本ではコンビニなどでも入手することができますが、海外ではそれほど簡単に手に入らないことも多いです。

海外旅行保険

海外での医療費は一般的に極めて高額になるため、旅行保険は必須です。
しかし、喘息の子供の場合は、”既往症あり”に該当し、普通の海外旅行保険では既往症は保障されず、そもそも既往症があるために加入できないことも多いです

持病があっても加入することができ、持病も保障される海外旅行保険はAIG損害保険と、東京海上日動のものが挙げられます。

AIG海外旅行保険(旧AIU)

保険期間31日以内の契約では「持病・既往症」についても応急治療費用が補償される特約がセットされています。

「持病・既往症」について、応急治療費用などが補償される特約をセット(300万円限度)。旅行開始前に治療を受けたことがある病気が急激に悪化した場合も補償されます。

詳細⇒AIG損保

我が家はグアムでAIG保険(旧AIU保険)に喘息発作ではないのですが、お世話になったことがあります。
(その時の体験⇒グアム冬の家族旅行4日目〜海外で病院に行く!

現在も毎回子供だけはAIU保険に加入しています。
他の保険と比較すると割高になりますが、子供だけ加入することもできますし、インターネットで手続きもできるので便利です。

東京海上日動

保険期間31日以下のセットプランには”旅行開始前に治療を受けたことがある病気が急激に悪化した場合の補償”を提供する特約がセットされています。
ただし、インターネット、自動引受機による保険契約サービスでは取り扱っていないので、保険会社窓口で手続きを行う必要があります。

詳細⇒東京海上日動の海外旅行保険

現地で気をつけること

特に喘息の子供に限らず、子供と海外旅行に行く際には共通して注意したいことは以下の通りです。

日焼け

虫刺され

水の事故

感染症

⦿次の記事も参考になります。
国立成育医療研究センター:子どもと海外旅行に行く前に、小児感染症専門医がお願いしたいポイント

海外旅行で注意すべき感染症として、“食事や飲料水を介した感染症”、“環境を介した感染症”、“動物(特に蚊やダニ、他の哺乳類など)を介した感染症”を挙げ、それぞれについて注意事項が、まとめられています。

喘息の子供の場合は、特に以下についても気を配る必要があります。

ホテルの部屋の環境

ホテルのベッドや部屋のホコリが、発作を引き起こすこともあります。
ベッドの布団も羽毛を化繊に変更してもらうなどの対応が必要なお子さんもいらっしゃるかと思います。
禁煙ルームをリクエストするのはもちろんですが、先進国や高級ホテルなどでは、空気清浄機もリクエストできることがあります。

アクティビティ

運動が発作を誘発する場合があります。旅先ですと普段より活発に活動することも多いので、小さなお子さんの場合は特に様子に気を配る必要があります。

たばこの煙

国内では分煙が進んでいますが、海外ではまだ進んでいない地域もあります。たばこの煙が発作を誘発することもあるので、注意が必要です。